2020.12.17

「頭痛」の解説

頭痛は、よく見られる自覚症状です。単独で現れることもあれば、他の疾患の症状の一つとして現れることもあります。
その原因は様々であり、単に頭に鍼灸を施して改善するようなタイプの頭痛は、多くはありません。

 

<原因>

頭痛が起こる原因は、大きく「外感」と「内傷」に分けられます。
頭は「脳」がある場所であり、豊富な栄養が必要です。そのため、常に五臓から「気血」が運ばれ滋養されています。
したがって、外邪(外から体内に入り込む邪気のこと)が侵入して頭の気血の流れを阻害したり(外感)、内臓疾患による気血の流れの悪化や栄養不足(内傷)が、頭痛の原因となります。
一般的に、外感頭痛は急性、内傷頭痛は慢性に属します。
当院では、どのタイプの頭痛かを判別し、適切な施術を行っています。

 

<頭痛のタイプの分類>

ここでは、内傷による慢性頭痛を中心に解説いたします。

1.ストレス性の頭痛(肝陽頭痛)

◆症状
頭痛に眩暈が伴なう、イライラして怒りっぽい、安眠できない、脇の痛みがある、顔が赤い、口が苦く感じる、

◆解説
東洋医学では、「肝」は将軍に例えられます。要するに、「肝」の機能の失調は、勇猛な将軍のように機能が「亢進」しやすく、その症状が強く現れる臓器だということです。また、「肝の気」は上昇しやすいため、しばしば頭痛やめまいといった頭面部の症状が現れます。

◆適応する漢方薬
天麻釣藤飲

◆常用されるツボ
合谷・列缺・太衝・肝兪

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2.腎機能低下による頭痛(腎虚頭痛)

◆症状
頭が空になったような痛み(空痛)、めまい・耳鳴りを伴う、重だるい腰痛、抜け毛が気になる

◆解説
東洋医学では、脳は「髄海(ずいかい)」と呼ばれており、腎と深い関係があるとされています。腎機能が低下すると、上部にある脳を滋養できなくなり、頭が空になったような空痛やめまいが現れます。さらに、腎は耳とも関係が深く、腎が耳を養えなくなると低音の耳鳴りが発生します。この腎が原因の耳鳴りは、「キーン」という金属音のような高音の耳鳴りとは異なり、継続的に聞こえるという特徴があります。

◆適応する漢方薬
大補元煎

◆常用されるツボ
太谿・腎兪・志室

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3.血が足りないことによる頭痛(血虚頭痛)

◆症状
眩暈を伴う頭痛、動悸、顔色が白い、痛む部位を抑えると痛みが和らぐ、

◆解説
東洋医学では、痛みが引き起こされる原因の一つとして「不栄則痛(養わざれば則ち痛む)」という言葉があります。つまり、身体の各部位が気や血液などで十分に栄養されなくなると、その部分に痛みの症状が現れるということです。この場合の頭痛は、痛む部位を抑えると痛みが和らぐ(喜按)、ボーっとするような痛みがある、といった特徴があります。

◆適応する漢方薬
加味四物湯

◆常用されるツボ
三陰交・血海・膈兪

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4.血流の悪化による頭痛(瘀血頭痛)

◆症状
痛む部位が変わらない(固定痛)、鍼で刺すような痛み(刺痛)、頭痛が慢性化してなかなか治らない、夜間に悪化する、頭部に外傷歴がある場合がある

◆解説
東洋医学では、血流が悪化してできた病理産物のことを瘀血(おけつ)と呼び、様々な症状を引き起こす原因になると考えられています。その代表的な症状が、痛みです。東洋医学では、「不通則痛(通じざれば則ち痛む)」という原則があります。つまり、流れているものが流れにくくなると、痛みを引き起こす原因になる、ということです。この「瘀血」が体内で形成されると、それ自身がさらに血流を悪化させ、慢性的な痛みとなって現れてくるのです。瘀血の痛みには、「刺痛(刺すような痛み)」「夜間痛」「固定痛(痛む部位が固定されている)」といった特徴があります。

◆適応する漢方薬
通竅活血湯

◆常用されるツボ
三陰交・血海・膈兪

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5.水の流れの悪化による頭痛(痰濁頭痛)

◆症状
頭を布で巻かれたような痛み、倦怠感、食欲不振、軟便もしくは下痢、悪心・嘔吐を伴なうことが多い

◆解説
川の流れの悪いところに、ドロドロとした水やゴミが溜まるのと同じように、体内の水の流れが悪化すると、「痰濁(たんだく)」というドロドロとした病理産物になってしまいます。そして、その存在がさらに水の流れを悪化させ、様々な症状を引き起こします。東洋医学では、「不通則痛(通じざれば則ち痛む)」という原則があります。つまり、流れているものが流れにくくなると、痛みを引き起こす原因になる、ということです。水の流れが悪化すると、身体全体に倦怠感が現れ、水分代謝も鈍るため、軟便や下痢といった症状も引き起こすことになります。

◆適応する漢方薬
半夏白朮天麻湯

◆常用されるツボ
列缺・豊隆・太白・足三里